橋本 努 著『自生化主義 自由な社会はいかにして可能か』勁草書房、2025年2月
- 発売日
- :2025年2月10日
- 判型・ページ数
- :A5判 / 352頁
- 定価
- :4,730円(税込)
- ISBN
- :978-4-326-10348-5
私たち人間は善でも悪でもない、いわば鵺的な存在である。では鵺として理想の社会をいかに築くのか。それは未知なる欲望にチャンスを与えることによってである。社会も自己も生成の過程にあり、自生化主義は生成に力を与える。その内実を哲学的に基礎づけ、規範理論と実践哲学をあわせ描きながら、自由主義の新たな思想構築を企てる。
目次
はじめに
第一部 自生化という思考
第一章 自生的秩序論の解体
1 解体作業
2 ハイエクの市場論に対する強力な擁護論
3 ハイエクの自生的秩序論の論理的難点
4 おわりに
第二章 共有された暗黙知
1 世界3論への批判
2 個体主義と総体主義
3 世界4の導入
4 世界4論の問い
5 ポパーの世界類型を再分類する
6 おわりに
第三章 自生化主義 野性的な繁殖可能性を秘めた自然の活用
1 思考術
2 進化という企て
3 デュナミス(潜勢的可能性)
4 おわりに
第二部 自由の哲学
第四章 自由論 全的自由の立場
1 特定の自由と自由一般
2 全的自由の特徴
3 全的自由と関係主義的自由
4 自由の本来的価値と道具的価値
5 積極的自由とマグニチュード
6 「する自由」と「なる自由」
7 おわりに
第五章 問題論 ドゥルーズとの対質
1 潜勢的可能性の開示
2 哲学的な欲望
3 問題を立てる配慮とセンス
4 問題の迫真性
5 問題という自由
6 おわりに
第六章 他者論 レヴィナスとの対質
1 外部への回路
2 全体国家の外部
3 オイコスの外部
4 普遍的正義を超えて
5 創造的自由
6 おわりに
第七章 選択論 サルトルとの対質
1 問いと存在
2 他者と自由
3 おわりに
第八章 精神論 道元との対質
1 真実の自己
2 修行による全能感の獲得
3 世界内存在としての自己
4 夢の中での覚醒
5 言葉とテキスト
6 規範意識と救済
7 おわりに
第三部 成長論的自由主義の思想
第九章 自己所有の臨界 リバタリアニズム論
1 自己所有権テーゼの分析
2 臓器移植の問題
3 自己奴隷化契約の問題
4 所有の快楽という問題
5 おわりに
第十章 平等という苗床 マルクス主義論(1)
1 配分原理をめぐる問題
2 一つの課税制度案
3 「自生化」という発想
4 分析的マルクス主義の批判的摂取
5 おわりに
第十一章 世界変革の方法 マルクス主義論(2)
1 マルクス主義に関する十一のテーゼ
2 おわりに
第十二章 自己解釈の動態 コミュニタリアニズム論
1 意義深いコミュニタリアニズムとは
2 コミュニタリアニズムの独創性
3 解釈活動の優位
4 おわりに
第十三章 未知の自由のために 卓越主義論
1 ロールズ理論の卓越主義的解釈
2 自尊心の問題
3 中立型と卓越型―二つの自由主義の関係
4 啓発教化型と願望型
5 既知実現型と未知挑戦型―文化政策をめぐって
6 自尊心の代理的性格
7 おわりに
第四部 自生化主義の実践哲学
第十四章 公共性の本質
1 公共性の修辞学
2 「残基」としての公共性
3 公共性の再編
4 成長論の四つの伝統
5 おわりに
第十五章 公共空間のデザイン
1 公共性と自由の問題
2 公共性の二つのモデル
3 自由主義と抽象彫刻
4 自由と公共性を媒介する美的次元
5 おわりに
第十六章 立法の理論 闘争の諸段階
1 立法過程論の根本問題
2 法の支配と第二の認識論
3 リバタリアニズムと平等主義
4 支配をめぐる立法過程―法を偽装した法
5 おわりに
第十七章 立法過程のデザイン
1 理念と構想
2 民主主義の位置づけ
3 政策体系構想
4 おわりに
終章 言霊としての「むすび」
1 政策論的な含意
2 理性的制御主義を越えて
注
あとがき
文献
索引