西部忠 著『脱国家通貨の時代』秀和システム、2021年1月

発売日
:2021年1月16日
判型・ページ数
:4-6判・430ページ
定価
:1,900円+税
ISBN
:9784798060200

目次

■はじめに
 お金と言葉とスマホの統合が生み出す新しいコミュニケーション・メディアへ
 創世記の知恵:言葉の魔力と多様性

■第1章 いま暗号通貨の技術(テック)とコミュニティ通貨の理念(イデア)が融合しつつある
1・1 近づくキャッシュレス社会:低いキャッシュレス比率からの脱却
 日本でキャッシュレス化が進まない理由
 デジタルマネーで給与支払を可能に
1・2 仮想通貨の現状からみた多くの課題:「良貨」の条件へ向けて
 非常に高い仮想通貨のボラティリティ
 相次ぐ仮想通貨の流出・盗難事件
 グレシャム法則「悪貨が良貨を駆逐する」:独占の弊害
 ハイエクの貨幣選択原理の発動条件
 独占的競争が技術・製品のイノベーションを生む:価格・非価格競争と一物多価
 良貨の条件とは?
 「仮想通貨」から「暗号資産」へ?
1・3 「良貨」を目指す各種の試み:ステーブルコイン、銀行コイン/決済システム、デジタル地域通貨
 仮想通貨とステーブルコイン
 銀行コイン/決済システム
 デジタル通貨の試み

■第2章 仮想通貨の登場と貨幣のイノベーション
2・1 ビットコイン―仮想通貨群を成長させたキラー通貨
 バブルの膨張と破裂:ビットコインの値動きの激しさ
 ビットコイン長期的価値の驚くべき成長
 仮想通貨と法定通貨の共通性:観念貨幣としての現代貨幣
2・2 ビットコインのイノベーション―ブロックチェーン(分散台帳技術)、プルーフ・オブ・
ワーク、マイニング
 ビットコインの原点となる論文の著者「サトシナカモト」とは?
 分散(P2P)ネットワークのデジタルコイン
 2種類のブロックチェーン:パブリック型とプライベート/コンソーシアム型
 分散台帳技術(DLT)としてのブロックチェーン
 コンセンサス・アルゴリズムとしてのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)
 マイニング報酬による通貨発行と半減期
 スケーラビリティ問題
 ビットコインが存続するための必要条件①:マイニングの存続可能性
 ビットコインが存続するための必要条件②:価値の安定性、ステーブルコインの登場
 貨幣の脱国営化と競合通貨:仮想通貨は「良貨が悪貨を駆逐する」貨幣選択原理を作動させた
 貨幣としての使いづらさ:貨幣か資産か?
2・3 多様化する暗号通貨群? ビットコイン、アルトコイン、トークン
 多種多様化する仮想通貨群:アルトコインの相対的成長
 リップル:高速安価な国際送金と多通貨間取引を実現のためのXRPレジャー
 イーサリアム:分散アプリプラットフォーム、スマートコントラクト、トークン
 Pow、PoS、PoI
 Dappsとスマートコントラクト
 The DAO巨額盗難事件によるイーサリアムの分裂
 イーサリアムはどこを目指すのか?
2・4 仮想通貨による資金調達法―ICO、IEO、STO
 イーサリアムとICO
 イーサリアムに続くICO大爆発と仮想通貨トークンの大成長
 ICOの問題点
 ICOに代わる新たな資金調達手法としてのIPOとSTO
 金融商品取引法と資金決済法における法的解釈
 地方自治体によるICOの模索:西粟倉トークンエコノミーの取り組み
2・5 地域経済活性化を指向する暗号通貨の登場―Colu,Yuki
 イスラエル発の地域活性化型仮想通貨Coluと北海道発Yuki
 ブロックチェーンを使ったデジタル地域通貨「白虎」
 ●コラム クレイグ・ライト:ビットコインの創設者「サトシナカモト」?

■第3章 地域通貨の復興とその理念
3・1 通貨の万能さをあえて捨てることで進化する地域通貨
3・2 地域通貨とその歴史
 人間と猿の違い:メディアとしての言語と貨幣
 地域通貨の歴史
 ロバート・オーウェンの労働交換券
 シルビオ・ゲゼルの減価通貨
 1930年代の緊急通貨・ヴェーラと労働証明書
 世界最古の補完通貨WIR
3・3 現代の地域通貨
 1980年代に復活した地域通貨LETS
 LETSのゼロサム原理
 IOUからIOCへの転換
 現代の労働交換券とその問題点
 世界最大の地域通貨RGTの急成長と凋落
3・4 地域通貨の社会経済的背景、機能・目的、意義・多様性
 地域通貨の視点から見る市場経済
 地域通貨/コミュニティ通貨:貨幣と言語が融合するコミュニケーション・メディア
 地域通貨の目的
 「貨幣メディア」の機能
 地域通貨は貨幣か
 「社会・文化メディア」の機能
3・5 地域通貨の進化
 地域通貨の成長
 複数回流通型前払式証標(商品券)の地域通貨への転用
 地域通貨の伝播と分化
 地域通貨の多様性

■第4章 通貨はこれまでどう進化してきたか ―原始貨幣、物品貨幣・信用貨幣、国家貨幣、観念貨幣―
4・1 貨幣はどう進化してきたか
 本位貨幣と派生貨幣
 貨幣進化の樹形図
 内部貨幣としての原始貨幣
 外部貨幣としての物品貨幣と信用貨幣
 物品貨幣起源説か信用貨幣起源説か?
 貨幣交換の多様性
4・2 貨幣という社会制度の進化:近代における「一国一通貨」制度の確立
 リブラとは何か
 貨幣の進化
 一国一通貨制度とその例外
4・3 現代の国家通貨とは何か:物品貨幣でも信用貨幣でもない観念貨幣という謎
 中央銀行券は負債なのか資産なのか?
 中央銀行券の発券残高と貸借対照表の負債になぜ記載するか
 日本銀行の金融政策の失敗と信認の失墜
 日本銀行券は返済義務のない「債務証書」ではなく「出資証券」である
 不換中央銀行券を出資証券ととらえることの意味
 貸借対照表で「発行銀行券」を資本金として計上して公開するとどうなる
 中央銀行と金融機関の関係の変化
 個人や企業はどうとらえるか
 本物の貨幣と代理の貨幣
 貨幣の脱モノ化:「貨幣実体の脱モノ化」と「貨幣媒体の脱モノ化」
 現代中央銀行制度とロー・システムとの類似性
 日本銀行券の発行益(シニョレッジ)
 観念貨幣あるいは象徴貨幣
 なぜいまMMTか?
4・4 国家通貨から民間通貨へ
4・5 複合観念貨幣―経済価値だけでなく社会文化価値を表現する
 制度の多様性と二大メディア

■第5章 デジタル・コミュニティ通貨の未来
5・1 貨幣の脱国営化と共存通貨―多様な貨幣による貨幣制度生態系へ
 「貨幣の進化」のまとめ
 「通貨国家主義」と「通貨国際主義」の相克
 「貨幣の脱国営化論」における進化論的視点の新たな導入
 集中的市場と分散的市場の違い
 分散的市場における独占的競争が貨幣の革新と多様性をもたらす
 ハイエク脱国営化論とフリーバンキングやフリードマンとの違い
 グレシャム法則「悪貨が良貨を駆逐する」と撰銭原理「良貨が悪貨を駆逐する」
 差異を表示する記号として投機対象となった現代貨幣は悪貨の極みか
 慣習に埋没し撰銭を忘却した現代人
 ハイエク「貨幣の脱国営化」の時代上の制約
5・2 一国多通貨制、貨幣選択の自由、新しい「生活の質」への転換
 一国一通貨制から一国多通貨制へ
 貨幣選択の自由:多様なコミュニティに多重帰属し、多様な貨幣を使い分ける個人
 誇示的消費、表現的消費、支援的消費
 商品の選択と貨幣の選択の違い
 新しい「生活の質」への転換とグローバリゼーションの問題の解決
 スカラー貨幣とベクトル貨幣
 自由投資資本主義:グローバリゼーションの到達点、「市場の内部化」の究極点
 金融資本主義と労働力の金融化:自由投資主義の一側面
 金融資本主義の自己矛盾
 不平等の拡大というより不公正の拡大:金融資本主義のより根本的問題
 市場vs国家の二分法を超えて:「市場の失敗」を糊塗する「政府の失敗」
 アベノミクスの失敗
 コミュニティ通貨の意義:互酬交換原理によるボトムアップなソリューション
5・3 グッドマネー(良貨)の条件―価値の安定性、循環形成、消費市場・所得形成
 さるぼぼコイン
 アクアコイン
 「良貨」とは何か? グッドマネーラボの試み
 新型コロナウイルス:環境の急激な変化への適応
 これから何が起きるのか?

版元の紹介ページ: https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798060200.html