塩見 由梨 著『失われた〈重商主義〉の探求:ジェイムズ・ステュアートの商業・利潤・貨幣』白水社、2023年10月
- 発売日
- :2023年10月27日
- 判型・ページ数
- :四六判 / 258頁
- 定価
- :3,740円(税込)
- ISBN
- :9784560093917
なぜ忘却されねばならなかったのか?
経済学の歴史は、自由主義と重商主義の争いの歴史であるとも言われる(ロドリック『貿易戦争の政治経済学』)。資本主義の機能不全が指摘される昨今、重商主義への関心はこれまで以上に高まっている。
この重商主義を体系的に総括したとされるのが、本書の主人公ジェイムズ・ステュアート(1713-1780)である。その『経済学原理』(1767年)を丹念に読み解きながら、重商主義を捉え直すのが本書である。
ステュアート『経済学原理』は、資本主義が危機に陥るたび何度も読み直されてきた。19世紀にはカール・マルクスが『剰余価値学説史』で批判的に捉え直し、スミスの登場以来、忘却されたステュアートをよみがえらせている。
20世紀になると、ケインズがステュアートを召喚している。1930年代の危機のさなか、有名な「有効需要」の原理や保護貿易論がステュアートとともに提唱されていくことになる。
危機のたびに呼び出されてきたステュアートだが、マルクスはじめその読みは果たして正しかったのか? 本書は「商業」の構造を再検討しながら、利潤論と貨幣論を読み直していく。経済原論の新地平を開拓した一冊。
[目次]
序章
第一章 商業論の再考
一 ステュアート商業論への注目
二 「交易」の内容
三 市場理論と商業の機能
補論一 交易tradeについて
第二章 二つの利潤論
一 利潤論の分析視角
二 個別主体と譲渡利潤──第一の利潤論
三 為政者と利潤──第二の利潤論
第三章 競争論の構造──「交易と勤労」と「巧妙な手」
一 市場論の諸解釈
二 つり合いの理論
三 不つり合いの理論
補論二 有効需要effectual demandについて
補論三 均衡balanceについて
第四章 商業の原理と計算貨幣論
一 『原理』体系における貨幣論
二 計算貨幣以前──『原理』第一、二編での「貨幣」
三 計算貨幣の必然性
終章 ステュアートの重商主義理論
一 重商主義とステュアート
二 商業の経済学
三 ジェイムズ・ステュアートの重商主義
補論四 商業commerceについて
あとがき
註
参考文献